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「アスリートのデュアルキャリアについて」 〜藤野伸哉のデュアルキャリアについての考察〜

投稿日:2018年7月23日 更新日:

 

デュアルキャリアを体現しているアスリートに話を聞く「AYSインタビューコーナー」。2人目のインタビュイーは現役慶應義塾大学生ながらプロキックボクサーとして活躍する藤野伸哉さん。なんと公認会計士試験にも合格し、その活動も両立されています。その発想と戦略の背景にあるものを伺ってきました。

 

藤野伸哉 経歴

1996年生まれ。東京都出身。慶應義塾大学4年在学中。プロキックボクサー。TAC公認会計士講座(財務会計論)講師。プロキックボクサーと公認会計士のデュアルキャリアの形成を目指している。
キックボクサーとしては、2014年2月、キックボクシングでプロデビュー。2016年12月に右脚の頸骨を折る大怪我後、1年半の長期離脱を余儀なくされるも、2018年6月の復帰戦で勝利。プロ戦績は15戦10勝3敗2分(2018年10月現在)。
会計士としては、2016年11月、公認会計士試験に合格。2017年9月より、TAC公認会計士講座の講師を勤める。

 

インタビュイー 藤野伸哉 取材チーム 杉谷瑛介

 

環境から両立できるようになった】

杉谷 公認会計士とキックボクシングを現在両立しながらやってるじゃないですか。もともと小中学生から両立が苦にならないような性格だったんですか?

藤野 そこまで考えたことがないですけれど昔を振り返っても中学受験の時は受験一本でしたし、別にもともと両立できる性格ではないと思います。ただ一つ言えるのはやるって決めたことはやる方だった。会計士試験の受験勉強を始めた時もキックボクシングと会計士試験の受験を両立しようと思って始めたわけではなく、変な話会計士試験を舐めていたんですよね。笑 だからよく調べないまま公認会計士を目指す環境に入ってしまって、両立することになってしまった。

その後いろいろ相談して高校生のうちは計算科目を中心に勉強する。残りの理論科目に関しては後から勉強しようと決めたので、結局二年で受かるはずだったコースだったんですけど、一年遅らすことになりました。それで大学生になって勉強時間がとれるようになってからしっかり勉強して受かれました。

杉谷 高校の下積み+大学の1年間があってこそという感じですかね。

藤野そうですね。最初は舐めてたんですけれどやり始めたからには、やり切りたかったから。プロデビューもしちゃったからキックボクシングもやりたい。会計士試験もある。これも入っちゃったからやりたい。だから、最初はやらざるを得ない状態の自分になっちゃった。両立する環境を意図して作ったわけじゃないけど結果的にそうなっていました。

 

 

【ロールモデルを見つけ行動できるようになった】

杉谷 藤野くんが今に至るまでの思考のプロセスや、何で当たり前にやりきる力を手に入れられたかみたいな面においてはどう考えていますか?

藤野 最初は両立は難しいと思ったんです。勉強進めるにあたって大変だし皆は自分以上に勉強してるし。会計士受験生って一日中予備校にこもって勉強しているんです。その上で僕がキックボクシングをしながら両立するのは無理に近いと感じたんですが。ちょうどその時にネットで調べてたら現役のプロバスケ選手ながら公認会計士試験に受かった岡田優介選手という人がいるのを知ったんですよ。その記事を見てプロバスケ選手でしかも日本代表トップの選手が競技を続けながら合格出来てるんだったら僕もできるんじゃないかと思うようになりました。正直な話、バスケよりキックボクシングの方がマイナー競技だから楽だろうし。だから僕の中で岡田選手の存在は大きかったですね。

杉谷 それはネット記事でいいんですか?

藤野 僕の場合岡田選手を知ったのはネット記事でした。純粋にこんな凄い人がいるんだみたいな。会計士とキックボクシングを両立する面では岡田選手と言うモデルがあったからそれになりたいなと思ったのは結構ありますね。

杉谷 自分より忙しいしプロで活躍してる人がやってる人がやってるからやるっていうことですかね。

藤野 そうです。自分もできるってことです。

 

【競技を続けるデュアルキャリア、競技経験が付加価値を産む】

杉谷 両立をやれる人とやれない人の意識の差って何だと思いますか?公認会計士も別に取らなくてもいいじゃないですか。その上でなんで取ろうっていう選択ができたんですか。その動機は人生戦略とかではないんですか?

藤野 人生戦略ではないです。さっきの入っちゃったからやらざるを得なかったのもあるし、入ったからにはやりやり切りたかったのもあります。あとは、岡田選手に負けたくなかったのもありますね。笑

杉谷 ネット上にもライバル意識あるじゃないですか。

藤野 あるんですよ。でも結果的には会計士取れて良かったと思うのは資格があると逃げ道じゃないですけど後ろ盾ができるんですよね。だから、キックボクサーの方で大成できなくても会計士の資格があるからそっちでも仕事をもらえる。

僕は会計士をとってなかったら大学卒業と同時にキックボクシングやめてると思います。もともとそう思っていたし。儲かるものでもないですし。夢はありますけど、お金はそんなによくはないので普通に働いた方が、親に慶応にせっかく入れてもらってキックボクサーは危ないなって。ただ会計士をとったことによって資格の強さを使って会計士の仕事をしながら、キックボクシングができるみたいな。っていうのはできますね。

杉谷 競技を続ける直接的な一因にもなるって感じですかね。それは面白いですね。

藤野 資格取得が逃げ道になるからそこまで競技に関してプレッシャー感じずに済むのはあるのかなと思います。逃げ道ってことは諦めてもいいやって考えてしまうかもしれないですけど、競技の方も他のことを心配せずにできますね。お金とかセカンドキャリアの心配はそこまでないですし。

杉谷 藤野君の場合プロキックボクサーやりながら公認会計士って道をやって今セカンドキャリアとかも気にせずにできてるじゃないですか。その辺でプロアスリートやりながらこっちの道挑戦したからこそ得られたメリットっていうか、逆にプロキックボクサーがないまま公認会計士という肩書きの状態との比較というかプロという肩書きが公認会計士やその他の活動に活かされているような実感はありますか?

藤野 会計士としての付加価値ってことですかね。それは絶対ありますね。一番は覚えてもらえるってことですかね。異色なんで。100分の1を3重すればの話じゃないですけど、一つのことやってるだけだとそれだけなんだなって。スポーツ選手でもトップまで行っちゃえばあれだけで1億分の1何ですよね。ただあそこまで行くのって全員が目指せるものではないし、僕だったら、スポーツ選手ともう一つっていうの欲しくてそれはメリットとしてありますね。お互いで掛け合わせることによって自分が唯一無二の存在になってるんだろうな。それ具体的に何かっていうのはまだ自分の中で見出せてないとはあるんですけど。だけどスポーツ選手が資格取るのはいいと思うんですよ。相性は良いと思います。

杉谷 それは詳しく何でだと思いますか?

藤野 単純に資格って就職とかに強いですよね。これは学生アスリートとかの体育会だけだったらそれだけなんで。そこで就活で面接しますってなってサッカー部で活躍してましたって言ってもそこまで企業としてはそこだけでは魅力が感じない。ただサッカーとなんか資格取ってますって言うとスポーツやってそっちもやって実際のスキルとしてもあるって強いなって。

杉谷 英検そのものに価値があるんじゃなくて、英検も取ってるんだってこの人両方できるんだっていうところに価値がありますよね。

 

【体育会という組織の中でどういった“個人”になるか】

藤野 昔だったら組織の中の一人で良かったと思うんです。言われた事をこなすして出来たり、社内政治がうまい人材が求められていた。だからこういった能力は体育会生の強みが活きてきてと思うんですよ。でも今の時代は転職したり副業、起業する時代で複数の仕事をやる時代なので求められる人材が組織の中の誰か一人から組織の中の個人として何ができるかぎ大事だと思うんですよ。

それを考えると体育会だけになってしまうと、体育会という組織の中の誰か一人になってしまう。それだと、例えば就活でも不利だと思うので違いを生むためにも資格や他活動をすることは価値があると思います。むしろトップ選手でない層の人がやるっていうのはとても価値があると思います。こういった一種の、後ろ盾を持つことによって大学を卒業しても競技を続ける要因にもなりますし。

 

【今後のビジョンは掛け合わす作業〜体育会に伝えたいこと】

杉谷 今後のビジョンと体育会に何か伝えたいことがあればお願いします。

藤野 まずは選手としてチャンピオンになりたいです。デュアルキャリアとしての会計士はスポーツと会計と掛け合わせた何かをやりたいと考えています。そこを見つけて行く作業はまだ具体的にビジョンが決まっていないのでこれからしていきたいと思ってます。あとは今やっている両方ともを楽しむ事ですね。

なので体育会の皆さんもとりあえず何かやってみることは大事だと思います。自分もまず行動してみたってことが今に繋がっていると思うので、それは大事だなと改めて感じますね。 

 

P.S 杉谷

藤野くんと出会ったのは「G1カレッジ」という全国の大学生が集まるカンファレンスがきっかけでした。同じ4人グループでスポーツの未来についてディスカッションも行いました。私はデュアルキャリア実現においては「時間をいかに有効に使うか」を計画することが重要だと考えています、そのためには自分の行動特性をメタ認知し、自分が普段どんなスケジューリングで動いているのかをまず棚卸ししなくてはなりません。藤野くんは「プロキックボクサー」と「公認会計士」という極めて難易度の高い組み合わせを実現させており、その時間への捉え方はから見習うべきことが多くあります。また『競技を最優先にするためにもデュアルキャリアを実践する』という言葉も印象的でした。私も競技第一のアスリートをいかに支援していくかというテーマをで今後の施策を考えていきます。藤野さんお忙しいなか本当にありがとうございました!

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